映画は大衆の心と時代を映す鏡


映画は大衆の心と時代を映す鏡

 

大衆芸術 popular art はその時代と場所に生きる人々の嗜好と感性に訴えかけるものです。

ことに、どの芸術もまして広範囲の大衆に語りかけ、そうした人々のなかに感動や共感の嵐を巻き起こす映画は、何らかのかたちで時代が求めていた理想や大衆が抱いていた熱い思いを綴っています。

 

たとえばアメリカの60年代を例に取り上げてみましょう。

アラバマ州で失われたアメリカの理想を叫びながら人種間の正義を求めて立ち上がった1人の青年キング牧師 King, Martin Luther, Jr. (1929-68)は、やがて何百万もの民衆を奮い立たせることになります。

シネマ英語コラム

つぶやいてます。

シネマ英語の基礎知識から、為になる話、ウラ話。うーん、なんだか映画館に行きたくなってきました。

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「ミシシッピー・バーニング」(Mississippi Burning, 1988)に
見られる公民権運動 the Civil Rights Movement をめぐってのこの時代の混乱は、黒人への人種差別 discrimination に対する激烈な闘いや多くの流血事件を経て、肌の色を超えた相手への敬意を表す「招かざる客」(Guest Who's Coming to Dinner, 1967)や「夜の大捜査線」(In the heat of the Night, 1967)といった映画を生み出していきます。

またそれまで女性の場は家庭にあり、という伝統的な女性像から家庭にこもって家事や育児に専念していた女性たちも、意識の高まりと共に根本的な社会の変革と彼女たちの権利を公然と語り始めるようになります。
60年代の公民権運動のなかで兆しが見え始めてきた女性解放 women's liberation の運動は70年代に入って本格化することになるのです。

ある日突然、単調な家事と育児の繰り返しに辟易し、自分自身を取り戻したいと言って家を飛び出す女性を描いた「クレイマー、クレイマー」(Kramer vs. Kramer, 1979)や「結婚しない女」(An Unmarried Woman, 1978)のなかで夫の浮気が原因で離婚して自立を考える女の姿は、既存の制度や価値観を変革して完全に平等にして新しい男女関係を築き上げようとする大きな流れの中で、生まれくべくして生まれてきた作品でしょう。

 

社会は時の流れと共にまるで生き物のように刻一刻と変化しています。
そして、そのなかに生きる私たちは、自らの手で時代の波を作り上げながら、未知の領域へ向かって絶え間なく走り続けているのです。
だから、一つの時代に産声を上げた大衆のための映画は、その時代の趨勢 the current of the times や文化的特徴を微妙に反映した映像による資料であり、偽らざる現実の記録でもあるのです。
巨大な画面に映し出される登場人物の喜びに溢れた表情や苦悩に満ちた心の叫びは、その時代の激しい息づかいであり、その時代を生きる人々の感情や思考の調書なのです。

恐慌の30年代とミュージカル映画の組み合わせといった具合に、時代とその時代を代表する映画とは一見何の関係もないように思える場合でも、映画や社会的背景 social background を分析すれば、実はそれらが時代の潮流をリアリスティックに realistic に、あるいは象徴的 symblic に表していることが分かるのです。

今度、映画を鑑賞するときは私たちの感覚を司る精神に強烈に訴えかける時代の速記録として、あるいは時代の流れや社会を映す鏡として映画を読んでみてください。
きっと映像やセリフのふしぶしに秘められた秘密が見えてくるに違いありません。

 

 

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